抗VEGF薬治療(硝子体内注射)

抗VEGF薬治療(硝子体内注射)
当院ではルセンティス・アイリーアを使用しております

網膜上の血流悪化によって血管から血液やその成分が漏出すると、網膜の中心に位置する黄斑に黄斑浮腫と呼ばれるむくみが発生して、深刻な視力障害をもたらすことがあります。また、悪化した血流を補うために新生血管と呼ばれる血管が発生して、網膜に重篤な病気を招くこともあります。
こうした状況は全て、VEGF(血管内皮増殖因子)と呼ばれるタンパク質の持つ働きに誘発されて起きるといわれています。
抗VEGF薬治療は、このVEGFの働きを抑える抗VEGF薬(抗血管新生薬)を眼球内に注射して、血管からの漏出や新生血管の発生と成長を抑制する最新の治療法です。

抗VEGF薬治療(硝子体内注射) 当院ではルセンティス・アイリーアを使用しております

抗VEGF薬治療の適応症

現在のところ、抗VEGF薬治療の適応が可能として承認されている病気は以下の4つになります。

加齢黄斑変性症

加齢黄斑変性症とは

加齢黄斑変性症とは網膜の中心に位置する黄斑が何らかの原因でダメージを受け、機能を低下させることで起きる病気です。
人がものを見るにあたって、網膜は外から入ってきた光の詳細を識別している組織です。その識別の大半を担っているのが、網膜の一部として人の視力を司っている黄斑です。そうした黄斑の機能が低下することで深刻な視力障害が発生し、放置すれば失明に至ることもあります。
実際に欧米諸国では以前より失明の主要な原因となっていますが、日本でも高齢者人口の増加や欧米風ライフスタイルの浸透によって、ここ20年ほどで患者数が急増しました。
特に日本人の場合、網膜の下に層を成す脈絡膜から発生した異常な血管(新生血管)が原因となって発症するケースが多くを占めています。その発症者のほとんどは高齢者で、特に50歳を超えると発症リスクが高まるとされている他、喫煙する方には明らかに発症しやすい傾向があることも判明しています。

日本人の失明原因疾患
第1位 緑内障
第2位 糖尿病網膜症
第3位 網膜色素変性症
第4位 加齢黄斑変性症
第5位 強度近視

症状

加齢黄斑変性症ではものの見え方にさまざまな異常が現れるだけでなく、その症状が進行もしていきます。特に典型的な症状は以下の通りです。

  • 視力が低下する
  • ものが歪んで見える
  • 視野の中心が暗く見える
  • 視界のコントラストが低下する
症状
症状

こうした症状によって、見ようとして目を向けている部分が見えにくくなるので、例えば本の文字を追うことが難しくなるなど、日常生活に支障をきたす場面が増えていきます。さらに放置すれば、全く光を失うわけではないものの自立した生活を送ることのできない社会的失明と呼ばれる状態に至ることもあります。

治療

加齢黄斑変性症は、比較的緩やかに進行する萎縮型と急速に進行する滲出型の2種類に分類されます。
このうち、萎縮型に対する有効な治療法は残念ながら現在のところ存在していません。一方、日本人に多い滲出型に対しては、以下に挙げるさまざまな治療法が過去において適応されてきました。

薬物療法

  • 薬やサプリメントの内服
  • 抗VEGF薬治療(抗血管新生薬療法)

レーザー・手術療法

  • レーザー光凝固術
  • 経瞳孔的温熱療法
  • 光線力学的療法(PDT)
  • 新生血管抜去術
  • 黄斑移動術

こうした中でも、滲出型の発症をもたらす新生血管を退縮させるために現在最も有効とされている治療法が抗VEGF薬治療です。当院では、代表的な抗VEGF薬であるルセンティスまたはアイリーアを用いて、この治療にあたっております。

抗VEGF薬治療とは

滲出型の加齢黄斑変性症には抗VEGF薬治療が第一選択となります。
抗VEGF薬治療は、抗VEGF薬であるルセンティスまたはアイリーアを白目の部分から眼球内の大半を満たす硝子体(しょうしたい)へと注射して、新生血管の発生や成長を抑制する治療法です。この注射を必要に応じて繰り返すことで、網膜や黄斑に生じた浮腫などの改善を促します。
なお、注射の前に点眼麻酔を行うので、痛みを感じることはほとんどありません。

抗VEGF薬治療とは
抗VEGF薬治療とは

治療スケジュール

加齢黄斑変性症に対する抗VEGF薬治療では、月1回のルセンティスまたはアイリーアの注射をまずは3ヶ月間繰り返し行います。その後は定期的な診察と検査(視力、眼底、光干渉断層計等)によって網膜・黄斑の状態や症状の改善程度を確認しながら、必要に応じて再び注射を行います。

治療スケジュール

費用

加齢黄斑変性症に対する抗VEGF薬治療には保険診療が適用されます。
一般的な費用は3割負担の場合、約55,000円となります。さらに70歳以上の方の場合、3割負担で56,700円まで、1割負担で14,000円までという上限額が設けられているので、ひと月でそれ以上の自己負担が発生することはありません。

糖尿病網膜症(糖尿病黄斑浮腫)

糖尿病網膜症(糖尿病黄斑浮腫)とは

糖尿病網膜症(糖尿病黄斑浮腫)とは

糖尿病網膜症は糖尿病の影響で網膜の血流が悪化することで起きる病気で、糖尿病腎症、糖尿病神経障害と並ぶ糖尿病の三大合併症の一つとされています。
糖尿病による高血糖のせいで固まりやすくなった血液が全身の血流を悪化させて、さまざまな場所にダメージを与えていきます。そうしたダメージをいち早く受けやすい場所の一つがデリケートな毛細血管の集まる網膜です。
網膜の血流が悪化すると、まずは網膜上を走る多数の毛細血管から血液やその成分が漏れ出したり、血管の内壁に瘤(こぶ)が作られるなどの障害が発生し始めます。
さらに血流の悪化が続くと、網膜が血液から受け取るはずだった酸素や栄養が不足し始めます。その不足分を補うために新生血管と呼ばれる異常な血管が作り出され、伸長しながら出血や血液成分の漏出を繰り返していきます。
そうした出血が硝子体内に溜まって硝子体出血を引き起こしたり、漏れ出た血液成分から増殖膜と呼ばれる異常な膜が形成されて、眼底(眼球の奥)から網膜を引き剥がす網膜剥離を引き起こすこともあります。この状態まで進行すると失明に至るリスクも高くなり、実際に日本人の失明原因としては2位を占めています。

糖尿病網膜症(糖尿病黄斑浮腫)とは
糖尿病網膜症(糖尿病黄斑浮腫)とは

また、こうした進行の如何にかかわらず、網膜の中心に位置する黄斑にまで出血や血液成分の漏出がおよんだ場合には、黄斑浮腫と呼ばれるむくみが発生して黄斑の働きが阻害され、深刻な視力障害がもたらされます。これが糖尿病黄斑浮腫です。

症状

糖尿病網膜症は、病状がかなり進行するまではかすみ目程度しか現れない自覚症状の乏しい病気として知られています。
そうした中でも黄斑にまで障害がおよぶ糖尿病黄斑浮腫においては、進行の如何にかかわらず、以下のような症状が現れやすいとされています。

  • 視力が低下する
  • ものが歪んで見える
  • 視野の中心が暗く見える
  • 視界のコントラストが低下する

症状 糖尿病網膜症(糖尿病黄斑浮腫)においては、こうした症状に注意を向ける必要があることはもちろんですが、それ以前の自覚症状がない段階から眼科を受診して、できるだけ早期に発見するよう努めることが失明のリスク軽減につながります 。

治療

発症初期の治療には、糖尿病そのものの治療法でもある血糖値(血液中の糖分濃度)コントロールが有効とされています。
一方、新生血管が発生した後の治療の主目的が新生血管の成長を抑制することに変わります。この段階で有効な治療法として挙げられるのは抗VEGF薬治療とレーザー光凝固術ですが、特に抗VEGF薬治療は網膜や黄斑にダメージを与えることなく新生血管を退縮させたり、浮腫の改善を促すことが可能です。
さらに、硝子体出血や網膜剥離といった重篤な病気を合併した場合には、硝子体手術を用いて透明度の落ちた硝子体を除去したり、剥がれた網膜を復位するなどの処置を行います。

抗VEGF薬治療とは

糖尿病網膜症(糖尿病黄斑浮腫)には抗VEGF薬治療が可能です。
抗VEGF薬治療は、抗VEGF薬であるルセンティスまたはアイリーアを白目の部分から眼球内の硝子体へと注射して、新生血管の発生や成長を抑制する治療法です。この注射を必要に応じて繰り返すことで、網膜や黄斑に生じた浮腫などの改善を促します。
なお、注射の前に点眼麻酔を行うので、痛みを感じることはほとんどありません。

抗VEGF薬治療とは
抗VEGF薬治療とは

治療スケジュール

糖尿病網膜症(糖尿病黄斑浮腫)に対する抗VEGF薬治療では、通常1ヶ月に1回、3ヶ月連続してルセンティスまたはアイリーアの注射を行った後は、定期的な診察と検査(視力、眼底、光干渉断層計等)によって網膜・黄斑の状態や症状の改善程度を確認しながら、適宜追加の注射を行います。

治療スケジュール

費用

糖尿病網膜症(糖尿病黄斑浮腫)に対する抗VEGF薬治療には保険診療が適用されます。
一般的な費用は3割負担の場合、約55,000円となります。さらに70歳以上の方の場合、3割負担で56,700円まで、1割負担で14,000円までという上限額が設けられているので、ひと月でそれ以上の自己負担が発生することはありません。

網膜静脈閉塞症

網膜静脈閉塞症とは

網膜静脈閉塞症とは
網膜静脈閉塞症とは

網膜上を走る静脈が詰まって血流が悪化することで起きる病気です。
動脈硬化からの圧迫を受けて作られた血栓で静脈が詰まり、行き場を失った血液やその成分が漏れ出して、網膜や黄斑に浮腫(むくみ)を引き起こします。それにより視力障害が発生しますが、症状の重さは血流の悪化範囲や浮腫の位置などによって大きく異なる場合があります。

網膜静脈閉塞症とは

主な原因として慢性腎臓病や、高血圧とそれにともなう動脈硬化が挙げられる他、加齢とともに発症しやすくなる傾向があることも判明していて、発症リスクが高まる40歳以上の日本人の発症確率は50人に1人の割合とされています。

症状

網膜静脈閉塞症では主に以下のような症状が現れますが、症状の重さは血流の悪化範囲や浮腫の位置などによって大きく異なる場合があります。

  • 視力が低下する
  • ものが歪んで見える
  • 視野の一部が欠ける
  • 視界にもやがかかったように見える
症状
症状
症状

特に眼球内を走る静脈の根元が詰まった場合、黄斑を含めた網膜全体に血液やその成分が漏出して、上記のような症状が急激に進行することがあります。

治療

症状があまり現れていないようなケースでは、血流を改善する内服薬を処方して経過を観察します。
また、網膜や黄斑に生じた浮腫に対する治療には抗VEGF薬治療とレーザー光凝固術が有効ですが、特に抗VEGF薬治療は網膜や黄斑にダメージを与えることなく浮腫の改善を促すことが可能です。
一方、そうした治療では浮腫が改善されないような場合には、硝子体手術を用いて硝子体を除去することで、網膜に対する圧力を軽減して浮腫の改善を図る場合もあります。

抗VEGF薬治療とは

網膜静脈閉塞症による黄斑浮腫には抗VEGF薬治療が適応となります。
抗VEGF薬治療は、抗VEGF薬であるルセンティスまたはアイリーアを白目の部分から眼球内の硝子体へと注射して、血管からの漏出を抑制する治療法です。この注射を必要に応じて繰り返すことで、網膜や黄斑に生じた浮腫などの改善を促します。
なお、注射の前に点眼麻酔を行うので、痛みを感じることはほとんどありません。

抗VEGF薬治療とは
抗VEGF薬治療とは

治療スケジュール

網膜静脈閉塞症に対する抗VEGF薬治療では、最初に1回だけルセンティスまたはアイリーアの注射を行った後は、定期的な診察と検査(視力、眼底、光干渉断層計等)によって網膜・黄斑の状態や症状の改善程度を確認しながら、必要に応じて再び注射を行います。

治療スケジュール

費用

網膜静脈閉塞症に対する抗VEGF薬治療には保険診療が適用されます。
一般的な費用は3割負担の場合、約55,000円となります。さらに70歳以上の方の場合、3割負担で56,700円まで、1割負担で14,000円までという上限額が設けられているので、ひと月でそれ以上の自己負担が発生することはありません。

強度近視(病的近視)

強度近視(病的近視)とは

眼軸長(角膜から網膜までの長さ)が通常よりも長く伸びることで発生する強い近視を強度近視といいます。
眼軸長の伸長にともなって眼底も伸長を余儀なくされるため、網膜をはじめとする眼底の各組織にさまざまな障害や病気が発生することがあります。中には放置すると失明に至る可能性のあるものもあり、実際に日本人の失明原因としては5位を占めています。
眼軸長が伸長する原因には遺伝や環境などの影響が考えられていますが、はっきりとはわかっていません。

日本人の失明原因疾患
第1位 緑内障
第2位 糖尿病網膜症
第3位 網膜色素変性症
第4位 加齢黄斑変性症
第5位 強度近視
強度近視(病的近視)とは
強度近視(病的近視)とは

脈絡膜新生血管をともなう病的近視とは

眼軸長とともに伸長を余儀なくされたことで、網膜をはじめとする眼底は過度の負荷をかけられた状態に陥ります。その結果、網膜の下に層を成す脈絡膜から新生血管と呼ばれる未熟で脆い血管が発生し(脈絡膜新生血管)、上層へと伸びていきます。この新生血管からの出血や血液成分の漏出が、やがて網膜や黄斑に浮腫を引き起こしたり、網膜剥離などの重篤な病気の合併をもたらす元凶になる場合があります。
このように強度近視の影響で眼底に障害がおよんだ状態を病的近視といいます。

症状

強度近視(病的近視)によって網膜や黄斑に障害がおよぶと、主に以下のような症状が現れます。

  • 視力が低下する
  • ものが歪んで見える
  • 視野の中心が暗く見える
  • 視界のコントラストが低下する
症状
症状
症状
症状

また合併症として、視界に小さなゴミのようなものが漂う飛蚊症、視界に光が走ったり点滅したりする光視症、網膜や黄斑が眼底から引き剥がされる網膜剥離や近視性牽引性黄斑症、視神経がダメージを受ける近視性視神経症などの病気が発生することもあります。

治療

眼底に何の障害も発生していない強度近視の段階では、基本的に経過観察のみの処置となります。しかし、眼底に何らかの障害がおよんで病的近視へと進展した段階では、その障害の内容に応じた治療が必要になります。
特に脈絡膜新生血管に対しては、網膜や黄斑にダメージを与えることなく新生血管を退縮することが可能な抗VEGF薬治療が有効な治療法となります。また、網膜剥離や近視性牽引性黄斑症を合併した場合には、硝子体手術を用いて剥がれた網膜を復位するなどの処置を行います。

抗VEGF薬治療とは

強度近視(病的近視)による脈絡膜新生血管と黄斑浮腫には抗VEGF薬治療が適応となります。
抗VEGF薬治療は、抗VEGF薬であるルセンティスまたはアイリーアを白目の部分から眼球内の硝子体へと注射して、新生血管の発生や成長を抑制する治療法です。この注射を必要に応じて繰り返すことで、網膜や黄斑に生じた浮腫などの改善を促します。
なお、注射の前に点眼麻酔を行うので、痛みを感じることはほとんどありません。

抗VEGF薬治療とは
抗VEGF薬治療とは

治療スケジュール

強度近視(病的近視)に対する抗VEGF薬治療では、最初に1回だけルセンティスまたはアイリーアの注射を行った後は、定期的な診察と検査(視力、眼底、光干渉断層計等)によって網膜・黄斑の状態や症状の改善程度を確認しながら、必要に応じて再び注射を行います。

治療スケジュール

費用

強度近視(病的近視)に対する抗VEGF薬治療には保険診療が適用されます。
一般的な費用は3割負担の場合、約55,000円となります。さらに70歳以上の方の場合、3割負担で56,700円まで、1割負担で14,000円までという上限額が設けられているので、ひと月でそれ以上の自己負担が発生することはありません。

日本人の失明原因疾患
第1位 緑内障
第2位 糖尿病網膜症
第3位 網膜色素変性症
第4位 加齢黄斑変性症
第5位 強度近視
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