花粉症とは
春だけとは限らない花粉症
花粉症はアレルギー性疾患のひとつです。アレルギーは本来無害であるアレルゲンに対して免疫が可能に働くことで起こりますが、花粉症では花粉がアレルゲンになっています。
花粉症では、2月から4月に起こるスギ花粉によるものが有名ですが、その他の植物による花粉で起こる場合もあり、初夏、夏、秋などに起こる花粉症もあります。複数の植物にアレルギーを持っている場合もあり、ダニやカビなど通年性のアレルギーと紛らわしいため、なにか原因になっているか、きちんと調べる必要があります。
花粉症の症状
症状はくしゃみや鼻水、そして目のかゆみ、充血、涙目、腫れなどがあり、頭痛や不眠、集中力低下などの症状が現れる場合もよくあります。目のかゆみが強い場合、まぶたをかいてしまって眼疾病を起こしやすく、目はデリケートな器官ですからちょっとした力で傷ついてしまう場合もありますのでご注意ください。
効果的に症状を抑えましょう
花粉症の治療では、花粉が飛ぶ前に治療薬を内服することで症状が軽くなることがわかっています。そのため、どの花粉にアレルギーがあるかを調べておくと効果的に治療できます。また、その時期は、マスクや眼鏡をかけ、外出から帰ったら衣類や髪の毛を玄関先で払ってから部屋に入ったり、部屋の掃除をこまめに行い、洗濯物や布団を外に干さないようにするなどの対策も有効です。なお、頻繁に目を洗いたい際には、塩素が含まれた水道水ではなく、人工涙液を使うと安心です。
VDT症候群とは
最近、増えているVDT症候群
パソコンやスマートフォンなどの画面を集中して長時間見続けたことで起こるVDT症候群(Visual Display Terminal Syndrome)は、IT眼症と呼ばれることもあります。症状としては、疲れ目や視力低下などの目の不調だけでなく、頭痛や肩こり、背中や腰の痛み、手足のしびれなど体にも慢性的な症状が起こってきます。重くなるとイライラや不安感、抑うつ状態に陥る可能性もあるため、単純に疲れ目だと考えず、目の負担をできるだけ減らしていくことが重要です。
リスクの多い環境
DT症候群は、いくつもの要因によって起こっていることがほとんどで、環境にも大きく左右されます。たとえば、エアコンが一日中動いていて乾燥している室内はドライアイを起こしやすく、そうした状態で長時間過ごすとVDT症候群になりやすいと言えます。また、画面の位置も大きく関係しており、画面が目線より下にあれば涙の蒸発は少ないのですが、画面が上にあると目が乾きやすいだけでなく、首などにも負担がかかるため疲れやすくなります。
また、パソコンやスマートフォン使用時は、集中しているのでまばたきの回数が無意識にかなり減少しています。まばたきは目全体に涙を行き渡らせるために重要な役割を担っているため、まばたきが減ると目は乾きやすくなります。
また、眼鏡やコンタクトレンズで遠くがよく見えるように度数を決めている場合、パソコやスマートフォンは近距離でピントを合わせるため目に負担をかけてしまいます。できればデスクワーク用の眼鏡を作って、それを使用すると負担を軽減できます。
目を休めて環境改善を
意識的にまばたきの回数を増やし、適度な休憩で目を休め、乾燥を防いでドライアイにならないように注意してください。モニター画面を見続けて目がショボショボしたり、視力低下があって、少し目を休ませても回復しない場合には、眼科を受診しましょう。
老視(老眼)
加齢によって、水晶体の弾力性が低下や、水晶体を支える毛様体筋という筋肉が衰えていきます。それによって、ピントを合わせる機能が低下し、近い距離にピントを合わせにくくなった状態が老眼です。名前から高齢者がなるものと考えがちですが、実際には40歳前後で症状が現れはじめますし、細菌はスマホ老眼など若年層にも増えてきています。細かい文字を読む時にちょっと離して見直してしまうなどが起こったら、視力検査を受けてください。そのまま過ごしていると、目が疲れやすく、肩こりや頭痛などの原因になってしまいます。
ドライアイ
ムチン層目は涙によってさまざまな刺激から守られています。涙の量が不足したり、成分が変わってしまうと、目を守る機能が十分果たせなくなり、目が乾きやすい状態を引き起こします。これがドライアイの原因です。ドライアイになると角膜や結膜は乾燥して傷付きやすくなります。ドライアイでは、目の疲れ、ショボショボする、ゴロゴロする、充血するといった症状が現れます。空気の乾燥やまばたきの回数が減るとドライアイの症状が悪化しやすくなります。集中するとまばたきの回数は無意識に減ってしまうため、乾燥した室内でパソコンなどの画面を長時間見続けるのは、ドライアイになりやすいと言えます。またコンタクトレンズ装用もドライアイリスクが高いので、注意しましょう。
弱視
弱視とは、なんらかの原因で視力の発達が遅れて、眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても満足な視力が得られないことです。主に、屈折異常や斜視などで視力の発達が遅れることで起こります。子どもの弱視に関しては、特に早期の受診が必要です。見るという機能は学習によって成長していきます。網膜にピントの合った像を見ることで視力が発達するので、弱視の場合、幼い頃に眼鏡で矯正しないと視力の発達が遅れてしまいます。視力が最も発達する時期を逃してしまうと、治療効果がほとんど上がらなくなってしまい、将来、運転免許などがとれなくなってしまう可能性もあります。テレビや絵本をとても近い距離で見ているなどに気付いたら、早めに眼科を受診しましょう。
屈折異常(近視・遠視・乱視)
屈折異常光は水晶体という目の中のレンズによって屈折し網膜の上にピントを合わせます。見ているものがはっきり見えるのは、網膜上に光の焦点が合っているということです。この屈折がうまく働かない状態は屈折異常と呼ばれ、近視、遠視、乱視に分けられます。近視は、網膜より手前にピントが合っており、遠視は逆に網膜より奥にピントが合っています。近視と遠視は、どちらもぼやけて見えます。乱視は焦点が1点に結ばれず、見ているものが何重にもだぶって見える状態です。屈折異常は、視力検査を基本に、角膜や水晶体の屈折力や眼科弛緩の有無を確認した上で、度数をしっかり合わせた眼鏡やコンタクトレンズの装用で矯正します。
不同視
不同視は、左右の視力に大きく差がある状態です。片目だけで見ているとなりやすいと言われており、ものを見る時にまっすぐ見る姿勢を取らないといった生活習慣が大きくかかわっています。不同視では両眼視の機能が低下してしまうため、遠近感や立体感を捉えにくくなってしまいます。強い不同視の場合、眼鏡を装用すると重度の疲れ目の症状が出やすく、頭痛や肩こりなどを引き起こしやすくなります。コンタクトレンズでの矯正であればこうした症状は起こりません。視力の悪い目を使うようにする治療方法もあり、この場合、良い方の目をアイパッチで遮蔽します。
視神経炎
急性緑内障発作
急性緑内障発作は、眼圧が急激に上昇して起こるもので、目の充血、痛み、頭痛、吐き気といった強い症状が現れることが特徴です。発作が起きてから時間が経つと、それに比例して視力や視野が失われていくため、すみやかに眼圧を避ける必要があります。治療が遅れると失明の可能性もあります。緑内障は、網膜に映った画像の情報を脳に起こる視神経に異常が起こる病気です。視神経がダメージを受けると、脳に情報を正確に伝えることができなくなってしまいます。外傷や他の目の疾患によって起こることもあります。症状のうち、頭痛や吐き気が特に強い場合、内科などを受診される場合もあると思いますが、その際は眼圧の検査を必ず受けてください。
飛蚊症とは
飛蚊症とは
加齢や眼科疾患が原因で、いつの間にか目の前に蚊やゴミのような物が飛んで見えたり、雲のようなものが浮いて見えたり、墨を流したように見えたりする病気です。飛蚊症は、あらゆる年齢層に起こりますが、高齢の方ほど、特に近視の人ほど多く見られます。このような症状がでたら、早めに眼科専門医の診療を受けてください。
どんな検査をするの?
網膜・硝子体の状態を観察するため、眼底検査を行います。すみずみまで観察するため、瞳を大きくする目薬(散瞳剤)を用います。検査後はしばらくの間、ものが見えづらくなりますので車や自転車での来院は控えて下さい。
糖尿病網膜症とは
網膜と糖尿病
網膜は像の形、色、光といった情報を受け取る部分であり、カメラでたとえるとフィルムや受光素子(CCD)にあたります。網膜にはとても細かい血管が走っており、酸素や栄養素を運んでいます。糖尿病は高血糖状態が続く病気ですから、血管に大きな負担をかけ、血液の流れを悪化させ、血管をもろくしてしまいます。毛細血管ほど大きな影響を受けるため、微細な血管が縦横に走っている網膜に障害が起こりやすいのです。
三大合併症のひとつ
続くことにより、網膜は酸素不足になり、もろくなった血管は成分を漏れ出したり、破れて出血を起こします。さらに広い範囲で血管が詰まるようになると、深刻な酸素不足を補おうと異常な血管(新生血管)を発生させてしまい、ますます状態を悪化させ、網膜にさまざまなダメージを与えていきます。
失明原因の第1位
糖尿病網膜症では毎年3000人以上が失明しており、日本の失明原因で第1位になっています。症状が進むと眼底の大出血や網膜剥離を突然起こして、失明する場合がありますが、初期には自覚症状がないため放置してしまうケースが珍しくありません。
糖尿病網膜症を進行させないために
糖尿病網膜症では、網膜に穴が開いたり、網膜が剥離を起こすだけでなく、白内障や外眼筋麻痺などの眼疾患が起こる可能性があります。初期であれば、網膜にある虚血部分をレーザーで凝固させて進行を抑えることも可能です。症状が進行している場合には、硝子体手術で低下した視野を回復、あるいは維持できる可能性もありますが、不十分な視力回復しか望めない場合もあります。血糖値のコントロールはもちろん重要ですが、糖尿病と診断されたら定期的に眼科の検診を受けてください。網膜などの正確な検査は眼科でなければ受けることはできません。
網膜剥離
網膜は像の形、色、光といった情報を受け取る部分です。網膜剥離は、その名の通り網膜がはがれてしまった状態で、網膜裂孔という網膜に穴が開いた状態からはじまることが多くなっています。網膜がはがれた部分には像が映らなくなるため、その部分の視野が欠けてしまいます。範囲が広がると大きく視野を欠損し、急激な視力低下が起こりますし、失明に至る可能性もあります。そのため、初期に発見して治療を受けることがとても重要な病気です。初期症状では、見えにくさ、目のかすみのほか、小さなゴミのようなものが浮いているように見える飛蚊症や、目を閉じた際に端の方で光が走るように感じる光視症などがあります。
結膜炎
結膜炎は、ウイルス、細菌、アレルギー、乾燥などが原因で起こり、目のかゆみ、痛み、充血、目やになどの症状が現れる結膜の炎症です。このうち、ウイルス性結膜炎は一般的に「はやり目」と呼ばれているもので、感染力が強いため二次感染にも注意が必要です。
アレルギー性結膜炎は、花粉やハウスダストのほか、コンタクトレンズの汚れによって起こることもあります。また、アトピー性角結膜炎は、炎症が角膜に及ぶ場合があり、白内障、緑内障、網膜剥離を併発して深刻な視力低下を招く可能性があります。乾性角結膜炎はドライアイによるもので、結膜だけでなく、角膜にもダメージを与えます。抗生剤やステロイドの点眼、抗アレルギー剤、人工涙液やヒアルロン酸の点眼治療などから、症状にあったものを使って治療します。
角膜の障害(角膜潰瘍・角膜びらん・角膜炎)
角膜は黒目の部分をおおっていて、外界に接しているためトラブルが起こりやすい部分です。角膜の病気には角膜潰瘍、角膜びらん、角膜炎などがあります。角膜のこういった病気は、ウイルスや細菌感染、ドライアイによる乾燥、コンタクトレンズの適切ではない使用、ケガなどによって起こります。治療が遅れて角膜混濁を起こすと、病気自体は治っても角膜移植が必要になることもあるため、早期の受診が重要です。目の痛みや充血、目やに、ゴロゴロする、以前より光をまぶしく感じるなどの症状が現れたら、早めに眼科を受診してください。
ぶどう膜炎
眼球は3層になった膜に包まれており、中層がぶどう膜と呼ばれています。これは、色や形が果物のブドウに似ていることからついた名称で、虹彩、毛様体、脈絡膜からできています。ぶどう膜炎は、この部分に起こる炎症で、重症化しやすく、失明する可能性もあるため注意が必要です。目の痛み、赤み、充血、まぶしさ、涙、見えにくい、視界がかすむなどの症状があります。片目だけに現れる場合もありますが、両目に起きたり、交互に症状が現れるケースもあります。原因が細菌などによるものである場合はその治療を行いますが、原因がわからない場合が多く、その際には炎症を抑えて視力障害につながる合併症を予防する治療が中心となります。
ものもらい(麦粒腫)
ものもらい細菌に感染して急性の炎症が起こったもので、誰の皮膚にも存在する黄色ブドウ球菌などの常在菌が起こしているので人に感染することはありません。まぶたにある腺の出口やまつげの毛穴などから起こるため、まつげ周辺のかゆみが現れ、やがて腫れや赤み、痛みが起こり始めます。外麦粒腫はまぶたの外側にできるものなので症状はそれほど強くなく、まぶたの内側にできる内麦粒腫では痛みが強くなる傾向があります。適切な治療を受ければ通常は数日で治りますが、放置して炎症が進むと耳の付け根にあるリンパ節が腫れるなども起こります。また、膿が多い場合や、しこりが残って角膜を傷付ける恐れがある場合には切開も行います。
霰粒腫
まぶたに脂肪のようなものがたまって腺腫となったものです。しこりができるため、ゴロゴロしたり、痛みや赤み、充血、腫れなどの症状が起こります。しこりが角膜などに悪影響を与える場合には、切除も検討します。細菌感染を起こしやすいので、治療では抗菌薬や抗炎症薬の点眼を行います。感染していない場合には、痛みはほとんどありません。細菌感染を起こした場合には、急性霰粒腫と呼ばれます。急性霰粒腫では、抗菌の点眼薬や軟膏を使用し、抗生物質や抗炎症を内服する場合もあります。
眼瞼炎
眼瞼炎はまぶたに起こる炎症です。炎症の起こった場所により、まぶた皮膚の眼瞼皮膚炎、まつげの根本周辺の眼瞼縁炎、目尻の眼角眼瞼炎に分けられています。原因は、ウイルスや細菌、そしてかぶれやアレルギーがあります。症状は、赤みや腫れ、目やにがあり、腫れがしこりになる場合もあります。ウイルスや細菌の感染によるものの場合には痛みが起こり、かぶれやアレルギーによるものの場合はかゆみを伴います。炎症がひどくなると膿腫ができたり、まつげの脱毛が起こることもあります。原因によって、治療方法が全く違いますので、眼科専門医で検査を受け、しっかり治療を受けることが重要です。
結膜下出血
結膜は白目とまぶたの裏側を覆っている粘膜で、ここには毛細血管がびっしり走っています。その血管が破れて出血が起こるのが結膜下出血です。目がゴロゴロする感じはあっても痛みなどの症状はありません。原因には、くしゃみや咳、鼻を強くかむ、過飲酒、月経、水中眼鏡などによる圧迫などがあります。白目部分が真っ赤になるため、かなり驚かれる方が多いのですが、眼球内に血液が入ることはなく、自然に吸収され、視力低下も起こさないのでほとんどの場合は心配ありません。ただし、ケガによるものや、痛みやかゆみなどの症状を伴う場合、そして頻繁に繰り返すなどがあったら、すみやかな治療が必要です。